室内気候の快適性について考える


快適な住まいの室内環境 ( 室内気候 )
 ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)によれば、快適性とは「環境条件への満足度を表わす知覚の状態」と定義しています。
 これを熱的な様々な作用要因に関して換言すると、快適性とは今よりも暑くなっても寒くなっても不快をもたらすような人の知覚の環境状態を意味しています。もちろん人にとっての快適性は、熱的なことだけではなく、室内環境における臭いや光、音、空気質、湿度、あるいはその時の人の気分や先行する体験など様々な要素によって異なってきますが、「快適な室内環境」とはどのような状態なのかと言うと、建築環境工学では室内における空間状態を室内気候といい、概ね次のように定義しています。

室内温度 冬においては20℃前後
夏においては28℃前後であること。
部屋の水平温度 水平温度分布が一様であること。
上下の温度差 3〜4K以下であること。
ある部分の室内に面する箇所の温度は、
その部分に近接する室温より3〜4K
以下であること。
湿度状況 冬においては、40〜50%で乾燥感
や湿っぽさがないこと。
室内気流 0.1〜0.2m/秒の清浄な室内気流
があること。

人の快適感覚について
 有効温度ETは、アメリカのヤグローとホフマンによって提案された被験者を使った実験により統計的に求めた快適指標で、気温、相対湿度、気流の3つの要素の温冷熱感覚に及ぼす影響を総合して温度尺度を示したものです。現在、一般に使用されているものは下図のネルビンらの実験を基に作られたASHRAEの新有効温度ETとその快適温度線図です。ETは着席状態で着衣量0.6clo、静穏な気流の場合を基準として、人間の感じ方の尺度が表されています。
 図中、右下がりに走っている点線が有効温度線で、同じ有効温度線の上にのるような温度と湿度の組み合わせに対し、人間はほとんど同じ感覚を受けるということです。

 例えば、夏においては乾球温度26℃、相対湿度50%の状態の点と、乾球温度24℃、相対湿度80%の状態の点とはいずれも有効温度22.7℃の線の上にあるので、人は同じ感覚を得るということになります。 これは言い換えると、乾球温度26℃の部屋で相対湿度が50%から相対湿度80%に上がったとすると、乾球温度は24℃にしないと人は人体に同じ感覚を得られないといことで、人の感覚は温度だけではなく、相対湿度によっても大きく影響を受けるということです。
冬の場合は、湿度が40%で乾球温度計が26℃だと有効温度(人が感じる体感温度)は22℃位になりますが、体感温度をそのままにして湿度を50%にすると乾球温度は25℃に下がります。
すなわち人が感じる体感温度は温度と湿度に左右されるわけですが、室内における空気の流れや壁、天井、床、窓などの表面輻射温度など様々な要因が人の温度的快適感に影響を及ぼすのです。


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